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喫茶ま・ろんど

TSFというやや特殊なジャンルのお話を書くのを主目的としたブログです。18禁ですのでご注意を。物語は全てフィクションですが、ノンフィクションだったら良いなぁと常に考えております。転載その他の二次利用を希望する方は、メールにてご相談ください。

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ゆでたまっ!ミニ その2

 来客を知らせるチャイムの音には、結構なバリエーションがある。
 ピンポーンとかリンリンとか、そういう擬音で表現できるような、まさに「チャイム」という言い方がしっくりくるタイプ。
 白鳥の湖とか新世界よりとか、誰でも知ってるような音楽の一部分を抜き取って流す「フレーズ」を流すタイプ。
 何となく耳障りの良く、短くて聞き取りやすい、シンプルな音階を並べ立てる「メロディ」のタイプ。
 「お客様がいらっしゃいました」のように、機械音声で知らせてくれる「ボイス」のタイプ。
 ぱっと思い浮かぶところはこんなところだろうか。
 それぞれの中でも製造メーカーごとに色々な工夫がされており、例えば同じ白鳥の湖を利用していても、音程が違ったりテンポが違ったり音調が違ったりということもあり、本当に様々なバリエーションに溢れている。
 ちなみにうちは「メロディ」タイプだ。
 何パターンか設定することは出来るが、今は「ドレミファミレド」と、各部屋に備え付けられたスピーカーから流れてくるようにしてある。
 で、結局のところ俺が何が言いたいのか、だ。
 実は今、そのさまざまなバリエーションのチャイム音全てに共通しているある問題点に気付いたのだ。
 それは、こうして十分近く絶え間なく流れ続けるとどうしようもなく鬱陶しいということだ。
 今の時間は午前二時二十分過ぎ。
 寝ぼけた頭で何回目かのチャイム音に気付き、
「こんな時間に来客?」
 ではなく、
「まさかもう朝!?」
 という焦りで飛び起きた。
 で、飛び起きてから、真っ暗なことに気付き、枕元の目覚まし時計で時間を確認したという流れだ。
 ちなみに連打しているらしく、

 ドレドレミファドレミドレドドドレミドドレドレミ

 のような流れ方をしている。
 飛び起き、時間を確認し、明かりをつけ、慌てて着替え、玄関前に立つまででおよそ十分。現在に至る。
 もう相手の予想はついているが、それでも――いや、それだからこそ、チェーンがかかっていることを確認してから玄関を開ける。
「どちらさま」
「遅い。わざわざ会いに来てあげたっていうのに何してたのよ」
 予想通りのお隣さん。延上菜月さんの姿がそこにあった。
 ちなみに服装は黒地に白のストライプラインが入ったスーツ姿。ジャケットとパンツがボディラインを演出し、いかにもできるOL風といった感じだ。
 と言っても、実際に何の仕事をしているのかは不明なのだが。……というか、そもそも何がしかの仕事をしてるんだろうか、この人。
「何って寝てたに決まってるでしょうが。何時だと思ってるんですか」
「六時半でしょ。夜の」
 違ぇ。
「二時半ですよ。夜中の二時半。適当な嘘言わんで下さい」
「あら、嘘じゃないわよ。ほら、私の時計だとちゃんと六時半でしょ」
 と言ってポケットから赤いベルトの腕時計を取り出し、突き出す。
 ……九時半。
「あら、いけない、間違えたわ。ええと、ああこっちこっち。ほら、六時半」
 改めて取り出した、銀の鎖が輝く懐中時計には、十一時半と刻まれていた。
「あれ。ああもう、これでもなかった。全く。十二個も時計があるとこれだから」
 ……もしかしてこのネタのために時計を十二個用意しているのか。
「じゃあもう十一時半で良いわ。昼の。別に来客するのに変な時間じゃないでしょ」
「変に決まってるでしょうが。何もかもが。夜中の二時半だって言ってるでしょうが。ていうか幾らなんでも昼の十一時半はないでしょう。真っ暗ですよ、空」
「ああ。白夜だから」
「ここは日本だ!」
 どうしてこうも滑らかに嘘がつけるのか。ていうかこの場合は極夜と言うべきだろう。
「こんな夜中に大声出すのはちょっとどうかと思うわよ」
「認めてんじゃん! 夜中だって認めてんじゃん!」
「……こんな昼間に大声出すのはちょっとどうかと思うわ」
 言い直しやがった!
 結果全く意味不明な叱責になっていることがもはやどうでもよくなる自由闊達ぶりだ。
「で、お肌の弱い私としては、日焼けしたくないから早く用件を済ませたいのだけれども、いつまでこの漫才を続ければ良いのかしらね」
「明日早い俺としても早く用件を済ませてもらいたいので、漫才はもう速攻でやめてもらって構いませんよ」
 なんで俺が悪い風になっているのか、辺りに突っ込みを入れるとまたキリがないからぐっとこらえる。この判断を自分で褒めてやりたい。
「気が合うわね。じゃあさっそく。ねえ、お酢、貸してくれないかしら」
「……はい?」
「あらやだ。お酢も知らないの。あの、適度な濃度に薄めて洗面器に浸した上で顔面を突っ込ませ、無理矢理に目を開かせれば、訓練された軍人だって小便漏らしながらなんでも自白してくれる便利な道具のことよ」
 むしろ分からなくなった。
「ええと、お酢って、調味料のお酢ですよね。なんでまた」
「あなた、お酢に調味料として以外の使い方があるとでも言うの。味付けに使うに決まってるじゃない」
 あんた、数秒前になんて言った。
「餃子をね。買ってきたの。仕事帰りにスーパーでね」
「はあ」
 やっぱり仕事はしてるんだ。何の仕事かは分からんけど。
「で、晩……お昼ごはんに食べようと思ったんだけど、帰ってきて開けてみたんだけど、付属のタレがお酢を使っていないタイプだったのよ」
 ……もう突っ込むのは我慢しよう。素直に従ってさっさと用件を済ませる方が賢い選択だ。
「私って、餃子のタレは醤油とお酢とラー油の組み合わせって決めてるのよね。だから、貸してほしいの。ご理解?」
「まぁ……理屈は分かりました。でもすいません。うち、お酢は置いてないんですよ」
「はあ? あなた、お酢を置いてなかったら、いざ誰かを拷問しようって時にどうするつもりなのよ」
「ム○……じゃなくて、拷問しませんから。……いや、ちがう。そうじゃない。あんまりお酢を使う料理しないんですよ」
 正直、塩、砂糖、醤油辺りがあれば不便はないんだよな。あとはまあ、ウスターソースとケチャップ、それに調理酒ぐらいか。調味料ではないけれど、サラダ油とバターもあるけれど。お酢を使った料理ってそんなに多くないから、持て余してしまうんだよな。
「それはね、本当においしいお酢を味わったことがないから言えるのよ。かわいそうに。本当にかわいそう。かわいそう。ああかわいそうかわいそう」
 そこまで俺はかわいそうじゃあない。断言できる。
「ちょっと待ってなさい。うちにある特別おいしいお酢、貸してあげるから」
「……はい?」
「どうかした? もしかして耳が悪いのかしら。それとも頭が悪いのかしら。むしろ顔が悪いのかしら。……全部ね」
 顔は関係ないだろ。いや、他も悪くないし。……いや、頭は少し自信がないが。……いやいや、今の流れで言われるほどは悪くない。
「持ってるんですか?」
「何を?」
「お酢」
「持ってなかったら貸せるわけないでしょ」
「持ってるのになんで借りに来てるんですか」
「…………はぁ」
 何その憐みの目。
「あのね。私が今食べたいのは、閉店間際のスーパーで買ってきた半額セールのすっかり冷えたお惣菜餃子なの。そんなものを食べるのに、超高級なお酢なんてもったいなくて使えるわけないでしょう。ちょっと考えれば分かるでしょうに。全く」
 いやあ、ちょっと難しいなあ、その理屈は。
 そもそもあなた、
「ま、ともあれ、無駄足だったってことか。使えない男。本当であれば無駄足料を払ってもらいたいところだけれど、今回のことは特別に貸しにしておいてあげるからありがたく思いなさい。ほら感謝の土下座を早く」
「しませんよ」
「しなさいよ」
「なんでそんな偉そうなんですか」
「偉いのよ」
「………………」
「土下座」
「しませんってば」
「土下座して一時の屈辱に耐えるのと、私に叫ばれて一年三ヶ月塀の中に入るのと、どっちがましだと思ってるのよ」
 何その具体的な数字。
「生憎ですけど、その手の疑いを掛けるのは無理ですよ」
「そう、ホモなのね」
「違います」
「ゲイなのね」
「言い方変えただけでしょう」
「犬しか抱けないからって差別はしないわよ」
「何の話ですか」
 ああもう話が終わらない。
「そうじゃなくて、どこかは分からないけれど、彰の奴がどこかに隠しカメラだか盗聴器だかをしかけてるんです」
「はあ?」
 あいつはどうにも俺の行動をかなりの精度で把握しているんだよな。それについて以前締め上げた時に、家の中に複数の隠しカメラをしかけていることまでは白状したが、その場所まではム○を使い切っても言わなかった。
 それでも自力で台所、トイレ、風呂、居間、寝室で五台は見つけた(親の寝室があるが、流石に普段使っていないし彰もそこは常識で弁えるだろうと調べてはいない。まあ、常識があればそもそも一個でも仕掛けないだろうが)。けれど、その後も俺の行動を把握している様子があったから、残念ながらまだ残っているらしい。
 宅配ピザを頼んだ時の玄関先でのやり取りを知られていたことがあるから、玄関周辺にあることは間違いないのだが、どうやっても見つからなかった。
 玄関だけなら実害は少ないだろうと判断して放置していたわけだが、結果としてはこうして延上さんから身を守るには役立ったというわけだ。
「それってこれのこと?」
 と、ドアスコープを指さす。
「え?」
「一般的なドアスコープとはレンズが違うじゃない。これ、明らかに撮影を目的とした種類のレンズよ」
「え?」
 延上さんが指差すドアスコープを――と言っても、延上さんは外に、俺は中にいるから、裏表違う面を、という形にはなるが、ともかくドアスコープに近寄って見つめてみる。
 特に何の変哲もない。レンズの種類が違うって言ってるけど全然見分けがつかない。というより、やっぱり延上さんのことだから適当に言ってるだけじゃ……あれ。
 スコープを覗いても、外にいる延上さんが見えない……。
「このマンション、オートロックですものね。マンション入口のモニターで来客を確認してれば、そりゃあチャイムが鳴ってもドアスコープは覗かないわよね」
 ……その通りだ。加えて俺の場合、相手が不明な場合でもドアスコープを覗かずに、チェーンロックを掛けた状態でとりあえずドアを開けるクセがある。丁度今、延上さんが来た時と同じように。
 ……当然、彰には知られている、だろう。
「ついでに言うと、人って隠されてる物を探すときって、無意識に、自分の視界の外に意識を向けちゃうのよね。隠してあるなら見える筈がない、って決め付けて。だから、見えてるものに対する注意が散漫になっちゃって、逆にこういう方が安全だったりするのよねぇ」
 ……その通りだ。探した時は、物陰や地面、天井ばかりに意識が行って、ドアは殆どノーマークだった。
「で?」
「え?」
「お礼」
「あ、ああ。ありがとうございます」
「は?」
「え?」
「ん?」
「へ?」
「……ねえ、あなたの持ってる辞書には『お礼イコールありがとうございます』とでも書いてあるのかしら?」
「大抵そうだと思いますけど」
「ちょっと待ってなさい。今、私の持ってる辞書を……」
「結構です。どうせ『現金』とか書いてあるんでしょう」
「やあねえ、それじゃあ一円だってお礼になっちゃうじゃない。ちゃんと具体的な数字で記載してあるわよ」
「だからこそ、結構です。隠しカメラの件は、本当に、ありがとうございました!」
 ていうかその辞書作る金をもっと有意義に使え、と。
「耕也君。お礼という字は『おさつ』とも読めるのよ」
「その情報に一片すら意味を見出せませんから。第一、頼んでもいない行為で現金を請求するのは、脅迫だったり恐喝だったり詐欺だったり押し売りだったりするんじゃないですか」
「あら、言うようになったわねぇ」
 なんで昔から知ってる風に返答してくるんだ。
「じゃあ、こうしましょう。今から私に頼みなさい。隠しカメラを見付けて下さい、って」
 何故そうなる。
「ちょっと順番が逆だけど些細な問題でしょ。そしてお金。これで問題無いわ」
「おおありです」
「なんでよ」
「既に頼まなくても俺が把握できてるからです」
「あのね、耕也君。確かに理屈ではそうなるのかもしれない。でもよく考えてみて。あなたが私に一言『お願いします』というだけで、私の懐がとても潤うことになるのよ」
「その潤いは俺の犠牲の上に成立するものでしょうが」
 しかも「とても」って。どれだけ俺から搾り取るつもりなんだ。
「ううん。困ったわねえ。予定が狂ったわ……」
「なんですか予定って」
「いえね、こっちの話。もうちょっと段取りを考えるべきだったわね。寝ぼけてるところに捲し立てればコロッと騙されてくれると思ったんだけど。まあ、ダメ元ではあったから構わないのだけれどね」
 ……なんだろう。話が見えてこないがなんとなく嫌な感じがする。
「ま、お酢を持っていないなら用事は無いし。今日は帰るわね。おやすみなさい」
 そう言って延上さんは、驚くほどあっさりと帰って行った。
 なんだったんだろう……。
 寝ているところを起こされはしたが、隠しカメラを(無料で)見つけてもらったという事実を見れば、むしろありがたい来訪だったような気がするなあ。
 ともかく、寝るか……。



 後日、明らかになった話。
 玄関の隠しカメラを設置したのは延上さんで、彰はそのデータを購入していただけだった。
 彰が搾取されていることに気付き始め、データの購入を渋るようになったため、回収がてら俺から謝礼を受け取ることで最後の金儲けをしようと企てていたらしい。
 結論。
 どんな状況であっても、延上さんに感謝することだけは間違いである。

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| | 2014-11-08(Sat)18:11 [編集]


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