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喫茶ま・ろんど

TSFというやや特殊なジャンルのお話を書くのを主目的としたブログです。18禁ですのでご注意を。物語は全てフィクションですが、ノンフィクションだったら良いなぁと常に考えております。転載その他の二次利用を希望する方は、メールにてご相談ください。

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(一般創作)安全なゲーム

『あなたがこの部屋に来るのは二十七回目です。前回は目覚めてから約二時間後、脱出直後、殺人鬼に銃で撃たれて死亡しました。』



 ぼうとした頭でディスプレイに映し出された文字を読むが、その意味は頭に入ってこない。
 ぐるりと見回すと、随分と簡素な部屋だ。窓一つない白壁の部屋には、自分が寝ていたパイプベッドとディスプレイしか見当たらない。いや、正確には、出入り口となる扉もあるが。
 なんとはなしにディスプレイに近付き画面に触れると、どうやらタッチパネルだったらしい。小さな電子音と共に画面が切り替わった。
『立場』
『履歴』
 二つの言葉が画面に映し出される。
 首をかしげると、コキ、と音が鳴った。
 人差し指で『立場』と表示された文字に触れてみる。
『死亡すると、目覚めた時点に時間が戻る。記憶は残らない』
 続けて画面に触れてみるが、電子音が鳴るばかりで何も反応をしない。
 これでは何のことだか全く意味が分からない。
 画面全体をよくよく見てみると、下の方に小さく、
『戻る』
 と表示されている。
 そこにためしに触れてみると、
『立場』
『履歴』
 と前の画面に戻った。
 次は『履歴』に触れてみる。
『二十六回目。目覚めてから約二時間後、脱出直後、殺人鬼に銃で撃たれて死亡しました。』
『次へ』
『前へ』
『戻る』
 『次へ』に触れてみる。何も反応しない。ならばと思い『前へ』に触れてみる。
『二十五回目。目覚めてから約二十八分後、二十一号室で壁から飛び出したナイフで刺され死亡しました。』
『前へ』
『二十四回目。目覚めてから約二十二分後、何もない小部屋、十四号室で吊り天井に押し潰され死亡しました。』
『前へ』。
『二十三回目。目覚めてから約十五分後、この部屋に仕掛けられている時限爆弾の爆発に巻き込まれ死亡しました。』
『前へ』『前へ』『前へ』『前へ』。
 そうやって読み進めるうちに段々と頭がはっきりとしてきた。やがて、目覚める前、最後の記憶が思い出される。



「おや、あなた、そんなに退屈していらっしゃるんですか。それなら、どうでしょう。是非とも私にハッピーなイベントを紹介させてもらえませんか。とても退屈している暇などない、デンジャラスでスリリングな、まあ、一種のゲームでございます。時には死の危険もあるゲームですがご安心ください。決してあなたが死ぬことはございません。え、意味が分からないと仰いますか。ははは、それはご安心を。実際にやってもらえればすぐに意味が分かりますよ。どうでしょう。興味はございませんか。ええ、そりゃあもう。絶対にあなたが死ぬことはございません。それだけは、胸を張ってお約束いたしましょう」



 何故だろう。どんな姿だったかいまいち思い出すことができないが、やけに陽気な話し方をする男にそう言われたのだ。
 本当に退屈がなくなるのならば、と考え無しに返事をした直後、私は意識を失った。そうして今、ここで目を覚ましたというわけだ。
 そうこうしているうちに、なるほど状況がつかめて来た。
 これはつまりテレビゲームのような状況ではないか。
 私は何かのゲームのキャラクターで、クリアに失敗して死亡しても、リセットしてスタート地点からやり直せる。
 スタート地点。すなわちこの部屋だ。
 リセットをして元通りになるなら、確かに死ぬ危険があろうとも死んで終わってしまうことは決してない。
 なるほど面白い。演出としては悪くないじゃあないか。
 あの男が何の目的でこんなことをしているのかは知れないが、そんなことは考えたところで分からない。今は、彼の提供してくれたこの遊び場を堪能してみるとしよう。
 むろん本気で時間が戻るなどとは思っていない。こうして、何度もやり直しているのだというふうに思わせるのも演出の一種であろう。
 得体のしれない男がそうして雰囲気作りのためにかいがいしく努力をする様を想像すると、少しばかりおかしくなり、同時に気分をしらけさせた。
 そういう思考はいかにももったいない。せっかくの機会だ。存分にこの「ゲーム」を楽しませてもらおうじゃあないか。
 ゲームであるなら無事に脱出するヒントはつまり、この死亡記録の中に存在している。どこでどんな行動を取れば死んでしまうのか。それがある程度推察することができる筈だ。
 例えばそう、二十四回目の内容だ。
 何もない小部屋、十四号室で吊り天井に押し潰され死亡。
 つまりは十四号室には何も重要なアイテムは存在せず、入ってしまうと吊り天井に潰されてしまうぞ、とこう教えてくれているわけだ。
 これで全ての死亡の結果を確認し、間違いのないように進めば恐らくはこのゲームをクリアすることができるという寸法だろう。
 事実、直前の死亡内容は「脱出直後に」となっている。この時点で、脱出できるだけの情報が全て揃っているという事実に他ならない。
 そうと決まれば、全ての死因をしっかりと確認しよう。何せもう目覚めてからそれなりの時間が経過している。
 ここに書かれていることを素直に信じるならば、あと数分もせずにこの部屋で爆弾が爆発し、私は死んでしまうのだから。



 幸い、自分のポケットの中にメモ帳とペンが入っていた。
 死因の中でも重要と思われる情報を抜き出し、いそいそとペンを走らせる。
 ふと、このまま十五分が経過するまで部屋にいてみようか、という誘惑にも駆られた。
 その時は、あの男が嫌らしい笑みでも浮かべながら現れ、
「残念でした。ゲームオーバーです」
 とでも言ってくるのだろうか。
 そんな姿を見るのも悪くはないが、せっかくここまで御膳立てをしてくれたのに、そんなつまらない終わらせ方をするのはもったいないだろう。
 ここは素直にゲームルールに従い、爆弾が爆発する前に部屋から脱出するとしよう。
 腕時計は身につけているが、目覚めた直後に確認をしていなかったため、正確な時間経過は分からない。だが恐らくろくに時間は残っていない。必要な情報は全てメモに写し終えた。ならばいよいよ出発するとしよう。
 メモ帳を手に握り、扉を開ける。どんな光景が広がっているのか楽しみだったが、そこは今まで居た部屋と殆ど変らなかった。真っ白な白壁に囲まれた、何もない部屋だ。
 違うのは、ベッドとディスプレイが無いことと、扉が複数あることぐらいだ。
 向かって正面に、
「八号室」
 右側に、
「十九号室」
 と書かれている。
 死亡の理由の中には全て、死亡した部屋番号が書かれている。とりあえずはそれらの死亡理由に記載されていない部屋を選んで進めば安全であろう。



 考えが変わったのは、部屋を出て数秒後のことだった。
 扉を閉じて、さて進もうかと考えたその時、後ろから凄まじい轟音が響いてきた。
 何事かと振り返ると、真後ろの扉がひどく信じられないひしゃげ方をしている。
 ぎょっとして立ち尽くしていると、扉が倒れ、固い音を立てた。
 こんな音を立てる扉だ。半端な力では傷一つ付かないだろう。
 その扉がここまでひしゃげる原因は何なのか。と考えるまでも無い。「時限爆弾の爆発」だ。
 この爆発は本物なのか。だとしたら冗談じゃあない。死ぬことはない、なんてありえないことじゃあないか。
あのまま気まぐれに部屋の中にいたら、間違いなく死んでいた。肉片の一つも残らなかっただろう。
 それならば一体どういうことなのか。
 これもまた演出の一つで、私が部屋の中に残っていれば爆発しなかったのだろうか。
 部屋から出たからこそ、演出の一環として爆発させたのだろうか。
 それとも。
 あるいは、そうなのだろうか。
 これは全て、真実なのだろうか。
 死んだとしても、やり直せる。だから、死ぬ危険はあっても死ぬことはない。
 あの男の言葉は、そういう意味の言葉だったのだろうか。
 そんなことができる存在とは一体何なのか。
 うすら気味悪くなり、背筋に寒気が走った。
 きっと前者だ。
 そう言い聞かせた。
 これも演出の一環だ。そうに違いない、と。
 そうだ。
 それを確かめよう。
 震える手でメモをめくる。書いた中の記憶にあった、あの内容を確認するのだ。
「三回目。六分。八号室の床を踏み抜き、針山に転落」
 汚い字ではあったが、自分のクセだ。問題なく読むことができる。
 正面の扉、八号室の床が抜け、その下には針が敷き詰められている。と読み解くことができる。
 呼吸を必死に整えながら、八号室の扉に手をかける。そしてゆっくりと扉を開けると、そこはやはり同じ部屋が広がっていた。
 奥には扉が一つだけ見える。七号室、と書かれているが、それはどうでも良い。
 部屋には入らず、地面に座り、外側からそっと床を押してみる。
 すると驚いたことに、全くこの部屋と同じに見えていたのに、その床材は信じられないほど脆く、ろくに力を加えずとも容易く突き抜けた。
 そしてなんということだろう。今の行為で空けられた穴の先には、到底作りものとは思えない、鋭い針がびっしりと広がっていた。
 もしかしたら、と淡い期待を込め、つまりはあれが本物そっくりの作りものの針かを確認するため、靴を脱いで落としてみた。
 そして希望はついえた。
 私の靴は、いともたやすく突き刺さり、針山の一部と化したのだ。



 そこからの私の行動は、まさしく慎重そのものだった。部屋を移動するたびに、メモを細かくチェックし、次はどのように行動すればいいのかを必死に考えた。
 時には隣室に潜む毒ガスが換気されるまで部屋に居続け、時には部屋のトラップが作動する前に一気に駆け抜けた。
 全ては、過去の私が死亡してくれたがための行動だ。
 そうして、目覚めてから二時間も経ったころだろうか。幾つもの部屋を渡り歩き、ようやく辿り着いた部屋、七号室にて「exit」と書かれた扉を発見した。
 素晴らしい安堵だ。
 これほどまでに生きていることに感謝したことはない。
 こうして考えてみれば、あの男は確かに私に刺激的なひと時を提供してくれたのだ。
 恐らくこれまでの死んでしまった私は決してすることのなかっただろう、あの男への感謝の気持ちを小さく抱いた。
 だが、まだ気が早い。
 二十六回目の死亡理由だ。メモにも書かれている。
「二十六回目。二時間後。脱出直後に銃」
 この部屋から出た瞬間、私は殺されるということだろう。
 ならばどうするべきか。
 しばし悩んだが、どうにもしようがない。慎重に扉を開け、外をのぞき込んだ。
 そこは確かに、外であった。
 息苦しい部屋の連続でない、開放感あふれる青空が広がっている。
 一気に飛び出してしまいたい衝動に駆られるが、それでは前回の私と同じ結果を辿ることになる。
 ならば、探さなくてはならない。
 その殺人鬼がどこに潜み、どうやって私を殺そうとしているのか。
 考えあぐねていると、扉の向こうから誰か走ってくるのが見えた。
 誰か、と言うのはおかしいだろう。このタイミングで近づいてくる存在と言えば、可能性は一つしかない。
 それにあの、スーツ姿で銃を手に持ち、目を血走らせた男はどう考えても殺人鬼と言うのにふさわしいではないか。
 と、そんなことを考えている間に奴は銃をこちらに向けて発砲した。前回の私はこれで殺されたのだろう。警戒していなければ、確かに、脱出したという喜びに気を取られ、あっさりと死んでいたことだ。
 しかし、その一撃を避けることができたからといって、一体これからどうするべきなのか。
 これまで辿った部屋を戻るべきか。いや、途中までならまだしも、メモも無しに正しく逆に移動する自信など全くない。それにそもそも、たとえ正確に戻れたとしても、最後は行き止まりになるのだ。
 悩んでいたその時、一つの答えに辿り着いた。
 それは善良な私にはとても抵抗のある考えであった。しかし、私を殺そうとする相手に対し、そのようなためらいを見せるのも滑稽と言うものだろう。
 部屋には、私がここに入ってきた扉と、出口の扉と、そしてもう一つ、扉が存在する。
 部屋の番号は表示されていないが、その部屋がなんであるのかを私は知っている。
 勢いよく開けると、そこは予想通りの部屋が存在した。
 これならばいける、と覚悟を決め、出口を一度閉じる。
 そうしてそのすぐそばで息をひそめ、殺人鬼が部屋に入ってくるのを待った。
 やがて、推察の通り、殺人鬼が部屋に入ってきた。
 瞬間、目の合った私に銃を向けようとしてきたが、それよりも早く襲いかかり、開け放しておいた隣室へと突き飛ばした。
 そう、この部屋は七号室なのだ。
 最初の部屋から出た直後。針山の潜む八号室の向こうに見えた部屋。
 つまり、この部屋からもまた、あの針山の部屋へ繋がっていたのだ。



 その後のことは言うまでも無いだろう。
 私を殺そうとした相手とはいえ、無残な最期を遂げさせたことにはそれなりの罪悪感があった。
 だが、あの恐怖から脱出したことの喜びと、その後の生活により、そんな後悔も段々と薄れていった。
 結局ゲームに誘ったあの男が何だったのか。あの部屋が何だったのかは分からない。
 ただ確かに彼は、退屈していた私に対して、刺激的な一時を提供してくれたのだ。
 死の危険が存在するが、決して死ぬことのない一時を。
 それだけは、助かってしまえば、複雑な気持ちながらも感謝することができた。
 むろん、次もやりたいか、と言われれば二度とごめんだが。













『あなたがこの部屋に来るのは二十八回目です。前回は目覚めてから約六十一年後、老衰による心筋梗塞で死亡しました。』

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コメント


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久々にまろんどさんの作品が読めてうれしい限りです。
TSのお話も好きですが、まろんどさんのこういうお話も大好きです。

イーラdeの町の人 | URL | 2012-05-01(Tue)22:30 [編集]


おお、久々に新作が。
しかも真っ黒だ、永遠に抜け出せないじゃないか。おそろしや。
もしかしたら、あの殺人鬼もゲームに巻き込まれた人なのか……。

猪庭兵輔 | URL | 2012-05-08(Tue)02:03 [編集]


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