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喫茶ま・ろんど

TSFというやや特殊なジャンルのお話を書くのを主目的としたブログです。18禁ですのでご注意を。物語は全てフィクションですが、ノンフィクションだったら良いなぁと常に考えております。転載その他の二次利用を希望する方は、メールにてご相談ください。

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ゆでたまっ!七個目 猥・おぼえていますか(前編)

 前を歩く女子のブラが透けていた。ブラウス越しにも、その色が分かる。ちなみに水色だ。今はまだ冬服の季節なので、本当ならまだジャケットを着ている筈で、つまり、ブラが見える筈は無いのだが、しかし、季節柄だいぶ暖かいためか、前の女子はジャケットを脱いで腰に巻き付け、恐らくは前側で袖同士を縛っている。そのため、はっきりと堪能することができた。まあ、厳密な言い方をすれば校則違反という奴だ。
 とはいえ、律義に校則を守る女子なんて皆無なのも確かだ。ルールよりも、気温や天気に合わせて快適に過ごそうと判断する女子の方が圧倒的に多い。その辺りはうちの学校が校則違反に対して割と緩いというのも大きいだろう。相当常軌を逸しない限りは指導されることもない。
 例えば前の女子の場合、ブラ以外にも、太もももかなりきわどい所まで見えている。スカートをかなり短く改造してあるためだ。加えて、本来腰骨辺りで履くべきスカートをたくし上げ、何センチか高い位置で身につけてている点も要因となっている(こうすると足が長く見えるから、という理由で、結構な数の女子がこの着こなし方を愛用している)。結果、決して色気がある方ではないが、健康的な印象を与える細く引き締まった太ももが、相当のところまで見えてしまっている状態だ。今は、スカートではなく、ジャケットの裾で足を隠しているというのに、その上でそこまで見ているので、あのジャケットがなければ更に凄まじいことになるのではないだろうか。
 そんな大胆な服装を見逃すのかと思えば、うちの学校は不思議なことに、靴下と靴に対しては相当厳しい。靴下は膝の下までカバーする完全に無地の白いハイソックス以外は認めない。ワンポイントすら認めない厳しさだ。
 靴に関しても、これも学校指定のローファー以外は許されず、購入も学校指定の店で購入しなければ、全く同じデザインであっても指導の対象になる。
 しかし厳しいのは何故か女子ばかりで、男子は「学生らしい落ち着いたデザインの物」としか指定されていない。靴下に対するルールは同じように無地の白と決まってはいるが、男子の場合は学生ズボンに隠れてしまうのであまり気付かれない。
 必然、その理不尽な差に対して生徒達の反発は強いが、未だ校則改正には至っておらず、皆渋々ながらも従っている状態だ。
 その点に関しては前の女子も分かっているようで、きっちりと校則通りにしている。
「きゃっ」
 不意の強風がいたずらを仕掛けた。その風は力強く、腰に巻いたジャケットごとスカートを舞い上がらせた。ただでさえ短く改造してあるスカートがめくれたわけだから、その結果がどうなるかは想像するまでもない。太ももの更にその奥まで丸見えになる。ほとんど無意識に視線が向いてしまった。男のサガというやつだ。
 女子は慌ててスカートを押さえようとするが、嬉し――もとい無情にも間に合わなかった。
 殆ど裏返しと言って良いくらいにめくれ上がったスカートの奥から、下着があらわになった。
 ……トランクスだ。それも俺の。
「もぅ……。耕也のえっち」
 照れ隠しにか、振り向きざまにベリーショートの髪をかきながら、頬を赤らめた彰はニコリと笑った。
 スカートの中に視線を向けたことを後悔せずにはいられない。ていうかそもそもあんなに必死にブラやら太ももやらに意識を向けていたことを。
「彰、質問が三つある」
「ならば聞かれる前に答えよう! まず、これは気のせいじゃあなくて、間違いなく耕也のトランクス。そして、手に入れたのは昨日遊びに行った時、耕也がトイレに行っている隙に。最後に、履いている理由は愛ゆえに!」
 何故聞かれる前に質問を把握しているのだ、お前は。
 ていうか三つ目は答えになっていない。
「貴様はエスパーか……」
 と、今更突っ込むのも虚しい限りだ。
「ダテに耕也を愛してないからね」
 だから答えになっとらんっつうの。
「ははは、そうかそうか。なら……とっとと返さんかぁ!」
「その一撃は屈めば当たらない!」
 不意打ちのラリアットがかわされた!?
「そして……! それはかわしてしまえば隙だらけだよ!」
 やばい、思い切り攻撃を外したせいで、完全に彰に背中を向けてしまった! 
 彰はかがみ込んだ状態から、何らかの反撃を仕掛けようと、拝むかのようにその両手を合わせている。まずい、体勢が整わん。このままでは……やられる!
「お二人とも、おはようございます」
「あ、おはよう、良い天気だね――」
 人の気配を察知した彰は、俺が立ち直るよりも素早く立ち上がり、何事もなかったかのように笑顔を向けた。
 た、助かった。彰も人がいる時は下手なことできんからな。
「ってなんだ。小春ちゃんかあ。分かってたら止めなかったのになあ」
 果たして何をやろうとしたのか、追求したいが墓穴を掘りそうで怖い……。
「ま、おケツを掘ろうとしただけだけどね」
 下品な韻を踏むな。
 ……いや違う問題はそこじゃあない。ええと、あれだ、心を読むな。
 しかし小春さんも、見た目だけだったら本当にきちっとしてるよなあ。なんていうか、学生の鑑という感じ。生徒手帳に載っている服装指導のページから飛び出したような見た目だ。
 髪型はいわゆるロングヘアーという奴だが、校則に倣ってきっちり三つ編みにしてある。胸元の、学年を示すブルーのリボンは、まるでそういうデザインのアクセサリーなんじゃないかと思えるほどに左右均等の蝶結びにしてある。こういうのって大抵どっちかバランス悪かったり、下手な奴だと縦結びになってたりするんだけどな。ちなみに彰の場合は蝶結び自体は上手いが、微妙に左右で余っている紐の長さが違う。制服も全く改造を施しておらず、スカートは膝下まできっちり隠しており、清楚を通り越して時代遅れって言った方がしっくりくるくらいだ。無論、靴下とローファーは校則通り。
 それなのに地味という印象を人に与えないのは、やっぱり、見た目が綺麗――いわゆる美人だからだろう。
 身長は女子にしてはかなり高く、百七十近いし、背筋もすっと伸びている。百五十代前半の彰と並べると、その高さが一層際立つ。……彰の低さが一層際立つ、と言っても良いが。ちなみに並ぶと胸のサイズも比較対象だ。彰、B。小春さん、E。二人とも、それぞれコンプレックスらしい。男には正直よく分からん話だ。
 顔立ちも整っているし、あと五センチ身長が高ければ、モデルも目指せたのではないだろうか。
「ところで彰さん。あなたの今履いてらっしゃるそのトランクスですが……。もしよろしければ後で私にも履かせて頂けませんか? いえ、無理ならせめてにおいだけでも….…」
 ……うん。口を開かなければ、本当にきっちりしてるんだ。開かなければ……。
 ていうか正確には俺が絡まなければ、か。ううん、こういう言い方してるとなんかうぬぼれてるみたいで微妙だな……。
「………………あ」
 ん?
「どうした、彰」
「おしっこしたい」
 と、唐突だな。普通に反応に困るわ。
「彰……お前も外見だけは女なんだから、もう少し言い方を考えたらどうだ」
 聞いているこっちが恥ずかしくなる。
「言い方?」
「ええと、あれだ、そういうときは、直接言わないで、花を摘むとかそう言うんだよ」
「花摘みという名のおしっこしたい」
 ああ、うん。お前に何かを期待した俺が間違ってた。ごめん。マジごめん。
「彰さん。耕也さんが仰りたいのは、女性が人前で強制絶頂だとか肛門拡張だとか公開露出だとかいう言葉を使うのははばかりなさい、ということですわよ」
「小春さんの言っていることは三割方正しいですが、残念ながらそれらの単語に関しては俺も彰も一言も発しておりませんので七割方間違っています」
「あら? でもしたいでしょう?」
「いいえ」
「でも、私はしたいのですよ?」
「一人でやって下さい」
「それはもう既に」
「はいストップ」
 色々危なかった……。
「まあ、ともかく、もう少し言葉遣いに気を付けた方が良いですわよ、彰さん。女らしさも大事ですから」
 その一言で済んだ話を何故敢えてかき回したのか。言及したいが更に面倒になるのが見えているから我慢するしかないなあ。
「ふむ、なるほど……そっか……女らしく……」
 お? 彰が珍しく真剣に考え込んでる。これは期待して良いのか? 少しは期待して良いのか?
「では、淫語を暗号化して隠語化する計画を提唱します」
「……よく分からんが、具体的にはどうするんだ?」
 とりあえず俺の淡い希望とは全く違う方向に突き進んでしまったことだけは理解できるが。
「暗号としてはメジャーな、一文字ずらしをつかいます」
「一文字ずらし?」
「そう。五十音を一文字ずつ前か後ろにずらすんだ。例えばコウヤの名前を後ろに一文字ずらすと「サエユ」になるんだよ」
 ああ、なるほど。そういうことか。言いたいことは分かった。それがどうして女らしさに繋がるのかは分からんが。
 ……いや、そんな言葉はもう頭の片隅にも残ってない――どころかお前の辞書には載ってすらいないんだろうな。
「濁音はどうしますの? 例えば『た行』の次、『な行』には濁音がございませんよ」
「そういうのは濁音をはずすだけさ。暗号だからね。ニュアンスが通じれば問題ないんだよ」
「じゃあ『ドラマ』だったら……『ナリミ』か」
「そうそう。『コウヤと合体』は『サエユナギテチウ』になるのさ」
「その例えは分からんがまあだいたい分かった」
「ま、そうやってさ。卑猥な言葉をぼかせばさ、女らしくなるんじゃないかと思うわけだよ」
 おお? 繋がってた? 彰の中では? ……え? どういうこと?
「これで、おちんちんはカツアツア。フェラチオはヘォリツカ。オナニーはカニヌー。繋げて、僕は今無性にコウヤのカツアツアをヘォリツカしながらカニヌーしたいわけだけど、ちょっとマトレにでも入らない? とアピールしても全くエロくないわけだね」
 思い切り口にしてるがな。隠語化する前に。
「しかし、これを利用することで逆に淫猥化する例もあるんだよね」
「ふむ?」
「例えば、某有名企業のキャッチコピー。これは大変なことになる」
「ほほう。興味は無いが聞いてやろう」
「旭○成。ウホ!」
「お前は今すぐ旭○成に行って土下座して来い!」
 ………………ん?
「いや、違う! そのキャッチコピーは一文字ずらすと『ウフ』だ!」
「ちっ。気付かれたか」
 気付かれたか。じゃねぇよ。何を無意味に特定企業を貶めとるんだ、お前は。
「さ、というわけで、マトレに行ってソテケセしようじゃないか。コウヤのイウベを想像すると、自然とカミアサが疼いてくるよ」
「却下だ」
「ええ! なぜ!?」
「それよりイクリ」
「僕の名前が淫猥扱いされている!?」
 淫猥でなければ何だというのか。
「あ、でもイク、クリだなんて、二人にぴったりだね」
 巻き込むな、俺を。
「まあ、もうそれはいいから……トイレは大丈夫なのか、彰」
「まあ、最悪漏らせばいいし」
 最悪だ!
「良くないからとっとと済ませてこい……」
「しかし、この辺りにはトイレ施設はありませんわよ」
 む。言われてみれば。公園もなければコンビニも遠い。トイレが借りられそうな店にも近場では心当たりがないな。ふーむ、困った。
「あの橋の下はいかがでしょう。人気がないから大丈夫そうですわよ」
 小春さんのその発想が、彰と同類なんだと実感せずにはいられない。綺麗なんだけどなあ、見た目は。本性を知らない時は、目が合うとドキッとしたんだけどなあ。今は、目が合うとゾワッとするもんなあ。
「うーん、でもなあ。流石にそれはちょっと……」
 んう? まさか羞恥心が存在するのか? あの彰に?
「なんていうかああいう橋の下って、強面のおっさんたちが三人組くらいで女の人を抑えつけて蹂躙してそうで怖いじゃない? で、そんなところにひょいひょい飛び込んで行ったら『見られたからには仕方ねぇ。お前ら、コイツも犯すぞ』とか言われて襲われちゃったりしてさ。どれだけ嫌がっても『へっへっへっ。叫んでも誰も来ねえよ。怨むなら襲われるぐらい可愛い自分を恨むんだな』とか言われちゃって、で、恐怖もあいまって、尿意に我慢の限界が訪れてお漏らししちゃって『こりゃあ良いや。濡らす手間が省けたぜ』何ていやらしく笑われながら」
「無いから」
「無いですわね。流石に」
「ぐう……小春ちゃんにまで否定された……」
 涙を溜めるな。泣きたいのはこっちだ。
「というわけで耕也、一緒に行」
「断る」
「くのは恥ずかしいから待ってて欲しかったけど、耕也がそこまで言うなら仕方ないなあ。僕は嫌なんだよ? 嫌だけど愛する耕也の頼みは断れないよ。だって言ったもんね、断る、って」
 ……しくじった!
「……い、言ってないぞ。聞き間違いだろう」
「あら、私も聞いておりました。確かに言いましたわよ」
 味方がいない……! 非常にまずい。何か逃げ道はないのか。何か、何か……。
「ほらほら、小春ちゃんも言ってるし」
 ぐうう、キラキラとした目の輝きの奥に、悪意という名の濁りが見え隠れしている。
「ふ、二人とも夢でも見たんだろ」
『一緒に行』
『断る』
『くのは恥ずかしいから待ってて欲しかったけど――』
「言ってるよねぇ」
「言ってますわねぇ」
 ははは、最近のICレコーダーは高性能なんだなあ。手の平に隠れるような小型サイズだからちっとも気付かなかったよ。くそ……。
「というわけで決定ー。耕也に見られて嬉し――いわけじゃないけど仕方なーいなーっと」
 うう、色々突っ込みたい……。
「あ、その前に、一つよろしいですか」
 ん?
「ほい?」
「彰さん、自分で自分のことを可愛いというのはちょっとどうかと思いますわ」
「ぐぅ……今更そこに突っ込まれるとは……」
 お、彰がしょげた。
「ま、それはともかく!」
 お、回復した。
「んしょ……。はい、耕也、言われたから返すね。勝手に借りててごめんね」
「ん?」
 ああ、俺のトランクスか。全く……。謝るくらいなら最初から黙って持ってくなって感じだな。まあ、言ったからって貸すようなもんではないが。
「はいはい、ありがとさん。もう持ってくなよ」
「いえいえ、どういたしまして、また持ってくけど」
 ……待てよ。何か違和感が。なんだろう。ええと、彰が俺のトランクスを勝手に持って帰って、それをさっきまで履いてて、で、それが今返されて……あ。
「というわけで、二人とも! あの橋の下にあるプレハブ小屋まで競争だ! 負けたら一日肉奴隷ね!」
「よぉし、負けませんわよ!」
「待たんか! 走るな! スカートがまくれる! 中身が見える!」
「大丈夫ー! もう何も履いてないからー!」
「だからやめろっちゅうとるんじゃあ!」
 だああ! 尻が見える! むしろ見えてる!
「パンツじゃないから恥ずかしくないもーん!」
「今更そんなネタを持ってくることが恥ずかしいわぁ!」
 っていうかパンツ以上にアウトだろうが!



「返さなくていいから履いてろ……」
 色々と不本意ではあるが、ノーパンで走り回られるよりは幾らかましだ。
 ちなみにレースの結果はノーコンテストにて終了。彰を止めるため咄嗟に足元の石を投げたら見事にヒットしてしまった。うずくまる彰の元に俺と小春さんが駆けつけて今に至る。少しばかり悪い気もするが、多分に彰の自業自得だから謝る気分にはなれん。
「返せって言ったり履けって言ったり。ワガママなんだから。全くどういうプレイだい。でもまあ、耕也がそこまで言ってくれるなら履かさせてもらうよ。耕也のトランクスをね。仕方なく仕方なく」
 ぬうううううう。なんだか今日は完全に彰に踊らされている気がする。
「とりあえずおしっこするから待っててね。というわけではい、耕也」
 ん? はい。……ってなんだこりゃ。デジカメ?
「綺麗に撮ってね」
 目の前が川で良かった。てい。
「ああん! 水に電子機器は禁物!」
 沈んだ沈んだ。これで世界に平和が訪れた。めでたしめでたし。
「うう、耕也は動画の方が良かったかあ。じゃあ仕方ない。特別だよ? はい、ビデオカメラ」
 てい。
「ああん! 川に電子機器はノーグッド!」
 よくよく考えたら川に捨てるのは環境的によろしくなかったな。後で彰に拾いに行かせるか。あいつの物だしな。スタッフが後ほどちゃんと回収しており、環境には影響を及ぼしておりません。的な。
「仕方ないなあ。こんなこといつもはしないよ? 特別だよ?」
 ん? ペットボトル?
「今注ぐから待っててね」
 待たん。
「デジカメもビデオカメラもペットボトルもしびんもいらん! 匂いも嗅がんし味わいもせんし浴びもしなけりゃ音も聞かん! とっとと普通に済ませんかぁ!」
 ……全く疲れる。
「……そこまで言っていないのにいちいち釘を差すってことはあれかな。機会があればしてみたいって思ってるのかな。どう思います? 小春ちゃん」
「そうですわねぇ。見るとか撮るならまだしも、飲むとか浴びるとなると……流石の私もマニアックと判断せざるを得ませんわねえ。彰さん」
 待て。何故俺が変態のように言われねばならん。確かに言いすぎた部分もあるかもしれんが、その九割九分以上は貴様が言わせたことだろうが。
「結論、耕也は変態さん。こぉの変態~ぃ」
 うわぁ、殴りてぇ。今だったら正当防衛で無罪になんないかな。
「でも、耕也になら……良いかな、なんて。ね、口、開けてくれる?」
 よし、殴らなくても良い。埋めよう。
「……あ、じゃあ私は橋の上で待ちましょうか。三十分くらい」
 気を使わないで。凄い困るから。



 で、結局こうして小春さんと二人で彰を待っているわけだが。遠目に用を足している彰の姿が見えてしまっている。
 ううん、見ないふり見ないふり。
「……耕也さん」
 ん? ……どうしたんだろ。小春さんにしては珍しく真剣な表情で。……これはあれか。前振りか。真剣に見せかけて――落とす的な。
「あのプレハブ小屋……今、誰か中に居ませんでしたか?」
 ん? プレハブ小屋? ……ああ、あれか。川の向こう側に建ってる奴。今、この辺りで河川工事をやってるからな。
 見た感じは事務所兼休憩室というか工事用の道具置き場というか。まあ、よくは分からないがそんな風に使われているっぽい小屋だ。
「いや、分かりませんね。気のせいじゃないですか?」
「そうでしょうか……」
「ほら、小屋の前に立ってるボードにも『休工日』って書いてあるし。誰も居ない筈ですよ」
 そもそも、最初からプレハブ小屋の存在は気にしていた。誰かが居るようだったら彰に用を足させるわけにいかないからな。
 しかし、今俺自身が言ったように、遠目にも分かる大きい赤い字で休工日と書いてあったから誰も居ないだろうと判断したんだ。
 確かに直接中を確認したわけではないから間違いなく居ない、と断言はできないが、しかし普通に考えて休工日に人は居ないだろう。誰か関係ない人間が入り込んでいる可能性も低いだろうと思う。部外者が入り込めないよう、常識で考えれば鍵を掛けているだろうしな。
「でも確かに誰か居たような……。心配ですわね。ちょっと二人で見に行ってみませんか」
「うーん、そこまで言うなら……」
 ん? なんだろう。今一瞬何かが引っかかったような。はて……。小春さんの言い方に妙な違和感があったような。
 ああ、そうだ。普通に考えたら『ちょっと見に行ってみませんか』だけで良いんじゃないか? わざわざ『二人で』なんて強調したような言い方されたから気になったんだ。
 大体にして、今更確認に行ったところでどうなるんだって話だ。一旦河川敷から上がって橋を渡って向こう側に降りて中を確認して。そんなことしている間に間違いなく彰の用が終わるだろうに。
 例え誰か居たとしてもそれは確認不足で彰が恥をかくってだけの話だし――そもそも恥なんて言葉はあいつの辞書に載ってはいないからますますもって意味がない。
 だから、つまり、行く意味は全く無いってことだ。
「……耕也さん?」
「あ、ああ、すみません。いや、今更行くまでもないでしょう。どうせもうすぐ彰も終わるだろうし」
「いえいえ、女性のおしっこを甘く見てはいけませんよ。ほら、耕也さんも記憶にあるでしょう。休み時間に鳴った途端にトイレに行って、チャイムが鳴るまで帰って来ない女子の方々」
 え、いやいや。あれは単にトイレで雑談しているだけじゃないのか? ……違うのか? 女子はそんなにずっと出続けるもののか? ……いやいや、無いだろう。無い筈だ……。分からないけど……。
「ましてやアレだけ我慢した末でのこと。まだまだ終わるわけがありません。それに、です。もしもあの小屋から誰かが彰さんを撮影していたらどうしますか。彰さんに脅しをかけるかもしれませんわ。いや、それだけならまだしも、それがネットに流出してそれを性質の悪い同級生が発見して、彰さんに集団で追い込みをかけてきて、放課後調教倶楽部が発足して――」
 かぶってるかぶってる。彰の芸風と思いっきりかぶってる。
「まあ、ともかく私の気のせいならそれで良いのです。ただ、それならそれで気のせいであることを確認するためにも、念のため二人で見に行ってみるべきだと思うのです」
 ……また『二人で』。
「あ、いえ。もしも誰か居たらほら。私一人では危ないでしょう。耕也さんが居てくれた方が心強いですから」
 ……聞いてもいないのに弁明し始めたじゃないか。
「ええっと、小春さん」
「はい、決心しましたか?」
「知ってますか? ドラマとか漫画で良く、当て身だとか、或いはクロロフォルムを染み込ませたハンカチで失神させるシーンがあるじゃないですか。でも、アレって実際はできないらしいですよ。当て身で気絶することはないし、クロロフォルムもむせるだけで終わるんですって」
「え? え? そ、その話が何か?」
 あからさまにうろたえている……。
「いえ、特に意味はないんですけど、ただ、なんていうか……。その鍵って何の鍵なのかなあ、と」
「えっ!?」
 スカートの右ポケットを押さえる。……そこに入ってるのか。どうやって複製したのか、とか色々と気にはなるが……。
「小春さん」
「は、はひ」
「大人しく待ちましょう」
「はい……」
 ううん、油断できん。
「ふう、お待たせー」
 ぬお! いつの間に!
「いやあ、すっきりすっきり。僕のおしっこが徐々に大きな水たまりとなっていって、やがて小さな流れを生み出し、それが川に流れ込む様子に大自然を感じずにいれないよ」
 そんな最低な大自然は知らん。
「しかしアレだね。おしっこしながら気になったけど、川向うのプレハブ小屋。誰か居たみたいだね」
 え?
「なんかこう、人影が幾つかゆらゆらと。ちょっと気になるから見に行った方がいいかもね。小春ちゃんに待って貰って二人で」
 ………………。
「あ、いやほら。万が一撮影でもされてたらさ。それを元に脅されるだけならまだしもそれがネットに流出してそれが運悪く同級生に発見されて」
 ダブってるダブってる。小春さんのネタと思い切りダブってる。
「で『このことをバラされたくなかったらお前の彼氏を紹介しろ』なんてことになって、哀れ耕也は同性愛者の餌食に」
 予想外の方向に飛んだ!
「えへへ。耕也が彼氏かぁー。照れるなぁー」
 いやいや。いやいやいやいや。
「ま、そんなことが無いとは言い切れないから。ね、見に行こう。ほら、ほら」
「断る」
「ええー。そんなこと言わないでさあ。行こうよ行こうよう。それともあれかい? 耕也は同性愛者大歓迎なのかい?」
 違う。何が間違ってるってお前の存在が何よりも間違っているが、とにもかくにも行く気はない。
「……あれ?」
 ん?
「どうしました? 小春さん」
「いや……今、本当に誰か居たような」
 え?
 あ……!
 距離があるから良く分からないが、確かに誰かの影が動いた。
 ていうか小春さん『本当に』って言ったぞ。確信はしていたが改めて言われるとなんとも言えない気分になるな……。
 って今はそれどころじゃないか。
「用は済んだわけだしさっさと行こうぜ。あんまり馬鹿騒ぎしてて不審に思われても困るからな」
「え。行かないの!?」
 何故そうなる……。
「行く意味がないだろう。あの距離じゃあ誰かが用を足しているくらいは分かるかもしれないが、よっぽど親しい人間でもない限り、それがお前だとは分からんだろうに。それに撮影するにしても、鮮明に撮れるとも思えん」
「分かんないじゃないかあ。よっぽど親しい人間かもしれないじゃないかあ。いやらしいオッサンがハイスペックの超高級一眼レフカメラを構えてくっきり鮮明に撮影しちゃってるかもしれないじゃないかあ」
 なんでこんな人気のないプレハブ小屋にそんな高性能のデジカメを構えたオッサンが潜んでなきゃならんのだ。
 ていうかお前のよっぽど親しい知人の中には、鍵の掛かったプレハブ小屋にどうにか侵入する手段を得て、実行に移すような奴が居るのか。
 ……あ、小春さんか。
「今更そんな心配をするくらいなら、お前はもう少し普段から清楚さを身につけろ。大体工事関係者だったら迷惑かけることになるだろうが。とっとと行くぞ」
「僕程清楚という言葉が似合う人間はいないのに……」
 どっちかって言うとお前は性祖だろうに。
「耕也の精巣をねぶる清楚な僕。なんちゃって」
 ……あれ? もしかして俺の考える清楚と彰の考える清楚って違うもの?
「ま、とにかく困りましたわねぇ。今日は休工日だから誰も居ないと思っていましたのに……。置いておいた撮影機材はどうやって回収すべきでしょうか」
「ああ、僕も滑車とロープとキシロカインと浣腸器具とバルーンをどうにかしないと……」
 そのまま捨てておけ。何のことかいまいち理解できないアイテムが並んでいるが、恐らくは俺の為に捨ててくれ。
 ……と、言いたいが、二人が世間様に迷惑をかけている以上、そういうわけにはいかんか。
「じゃあ、まあ、取りあえず行ってみるぞ。頼めば回収させてくれるかもしれんし」
「そうですわねぇ。怒られないと良いのですが……」
 怒られるっつうか呆れられるっつうか……。
「怒られる危険を冒してまでアレらを回収したいなんて。耕也もついにそっちに目覚めてくれたんだね」
「良く分からんが、その道具は漏れなくお前に使ってやろう」
「はい喜んで!」
 ……どうやら今日の俺はしくじりっぱなしだな。



 ふむ。近づいてみるとなるほど確かに物音が聞こえるな。
 しかし、この声は……なんかあれじゃないか? 不穏というか……。
「……くよぉ。女だから殴りゃしねぇけど、あんまり強情だとどうなるか分かんねぇぞ? 最悪テメェの身体で返してもらうって選択肢もあるんだからよ」
「冗談じゃないわよ。ふざけたイチャモン吹っ掛けてきて。意地でも渡すつもりないわよ」
「こっちだって冗談のつもりはねぇよ。こうなったら仕方ねぇ。兄貴が戻ってきたら、一発ヤってこっちが本気だってことを体で覚えてもらおうか」
 ただならぬ雰囲気だ。気付かれないようにそっと窓際に近付いて中を覗いてみると……ああ、小太りのおっさんがいる。パンチパーマにサングラスとアロハシャツの、いかにもって感じの人だ。
 しかも、その足元に女の人が……。ロープで両手を後ろ手に縛られて倒れてる。足もがっちり縛られて身動きとれないだろう様子だ。見た感じ二十代中頃だろうか。ちょっと性格のきつそうな目つきで――まあ、あんな状態だからオッサンを睨んでいるだけかもしれないけど。でもまあ、この状況で相手を睨み付けられるんだから、気は強いんだろう。
 スーツ姿だからどこかのOLさんか何かだと思うけど、何でこんな状況になってるんだ……。
「ああ……あのロープ、僕のじゃないか……。勝手に使われると困るなあ。ようやくまともに使えるように手入れし終わったばかりの奴なのに。正しく使って貰えないと傷んじゃうよ全く」
 正しい使い方はあれか。お前の首にかけてビルの屋上から吊るせばいいのか? それとも両手足に縛って海に投げ込むとか。
 まあ、そんな問題は流石に置いておこう。下手に突っ込むと小屋の中のおっさんに気付かれる危険もあるからな。
「この様子だと他の道具も見つかってしまっているのでしょうねぇ。全部一か所にまとめておきましたし」
「そうだねぇ。他の物も、あの女の人相手に既に使ってたりしないと良いんだけど」
 そんなことになっていたらあの女の人はもっとボロボロだったと思うぞ。いや、どんな道具なのかは知らないわけだが。
「耕也はどうかな。知らない女の人に使われちゃった道具を使いまわされるのは嫌な人? それとも逆に興奮する人? それとも、嫌なのが感じちゃう人?」
 最後のが何よりも分からんがどれも違う。
「そんなことより警察に連絡するぞ。気付かれないようにちょっと距離を取ろう」
「そうだね。流石に冗談言ってられる空気じゃないし」
「え、と……。申しわけありません。それは少し難しいかもしれません……」
 ん?
「おう、兄ちゃんら、覗きたぁええ根性してるのう。せっかくだから中に入ってゆっくり見学してけや。な?」
 ああ、そういえば兄貴が戻ってきたら、とか言ってたな……。この趣味の悪いスーツを着た長身の男が兄貴、か。タイミング最悪だ……。

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