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喫茶ま・ろんど

TSFというやや特殊なジャンルのお話を書くのを主目的としたブログです。18禁ですのでご注意を。物語は全てフィクションですが、ノンフィクションだったら良いなぁと常に考えております。転載その他の二次利用を希望する方は、メールにてご相談ください。

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死亡予定時刻十七時五十二分

エロでもない、TSでもない短編が一つ書き上がりました。
なので、雑記扱いで更新です。
気になる方は続きからどうぞでございます。
ちなみにジャンルはSFです。
SFじゃなくても書けたかもしれない内容ですけどね。



***********************************************
「本日は、WEスペースラインをご利用いただき、まことにありがとうございます。当カプセルは、まもなく引力圏に突入いたします。引力効果の発生によりカプセルが振動する場合がございますので、前方緑のランプが消えるまでシートベルトを装着し、席を立たないようお願い申し上げます。上海スペースポートへの到着は、現地時間十七時五十二分を予定しております。それでは、もうしばらく宇宙の旅をお楽しみください」
「……ん。もうそんな時間か。」
 アナウンスに起こされる。低く唸るような声は、周りに人がいればいかにも不機嫌そうに思われるだろう。まぶたをこする。肩を回し深呼吸をする。気兼ねなく低い声で唸る。いかにも気だるそうだ。
「あと――三十分か。寝てるとあっという間だな」
 月を出発したのが十二時過ぎで、それからすぐに寝に入ったので四時間以上寝ていたことになる。座席は決して寝るのに適しているとは言えないが、働き詰めて身体が疲れていることが、彼を深い眠りへといざなっていた。
「やっぱり多少割高でも一人用カプセルだと安心して眠れるな」
 まだはっきりしない頭を振りながら肘掛けのボタンに手を伸ばす。残り時間の暇をつぶすため、テレビでニュースのチェックをしようという考えだ。
「ん……?」
 適当にチャンネルを回すが、三度目で違和感を覚えてその手を止める。全ての番組が全く同じ場所を違う角度から映しているのだ。
 すべての番組で共通して、現場はパニックになっている。誰のものともつかない怒号が飛び交い人が走り回り、レポーターの口調からも緊急事態であることが伝わってくる。
「なんだなんだ。何か事件か。どこの局も緊急特番って感じだな。この騒ぎはよっぽどだぞ」
 直後、画面越しに耳を塞ぎたくなる程の爆音が響いてくる。
「またです! これで十四台目です! レスキューも待機はしているのですが、五分と置かずに次のカプセルが到着するため、作業に入ることができずにいます!」
 カプセル、という言葉に眉をひそめる。そこで彼は初めて気が付いた。映っているのは、まさに今向かっている上海スペースポートだ。
「ここ、上海スペースポートで大変なことが起こっています。七十三番チューブでブレーキシステムが正常に作動せず、到着予定のカプセルが時速八百キロを超える高速のまま次々と衝突しています。救護作業に入れないため、乗客の生死は一切確認できておりません。また、専門家によると、外部からの緊急停止を受け付けない点や、運航中のカプセルに連絡を取れない点から、カプセル運航システムを改変したサイバーテロの可能性が高いとのことです。繰り返します。ここ、上海スペースポートで大変な――」
 体が固まる。同時に彼は、このカプセルは何番チューブを運航しているのか、必死に思い出そうとした。しかし、全く頭が回らない。
 直後、カプセルが大きく揺れた。
「只今、引力圏に入りました。カプセルが揺れる場合がございますが、正常な動作ですのでご安心ください。前方緑のランプが消えるまでシートベルトを装着し、席を立たないようお願い申し上げます。上海スペースポートへの到着は、現地時間十七時五十二分を予定しております。到着のチューブは七十三番となっております。到着後は右手の階段を上がり、税関へとお進みください。それでは、もうしばらく宇宙の旅をお楽しみください」
 七十三番。
 確かにそう言った。今まさにテレビで流れていた番号だ。
 その事実を知った瞬間、彼の興奮は一瞬で最高にまで昂った。
「七十三番!? 時速八百キロ!? 衝突!? テロ!? 冗談じゃないぞ! 何か無いのか!?」
 パニックになりながらカプセル内を見渡す。真っ先に目に入ったのは、カプセル内に設置されてる緊急連絡用電話だ。
「もしもし! もしもし!」
 緊急時は左のボタンを押し、ランプが点灯したことを確認してから、受話器に向かってお話し下さい。
 ランプは点灯させている。それなのに、電話の先からはツーツーという機械音すら聞こえてこない。
 そこで彼は、先程のテレビで言っていた「カプセルと連絡が取れない」という言葉の意味を実感した。
「ああ! 十五台目のカプセルが激突しました! 衝撃が激しい震動となって、私のところまで届いています! すさまじい衝撃です!」
 付けっ放しにしておいたテレビからレポートが届く。テレビというのは現場の臨場感を伝えるのが仕事なのだろうが、今の彼には恐怖を増進させる役にしか立って居ない。
 それでも彼はテレビを消すわけにはいかなかった。緊急連絡用電話は使えない。自身の携帯電話も、アンテナが存在しないこの場所では全くの無意味だ。つまり、このテレビしか情報源が存在しないのだ。
 現在時刻は十七時三十七分。到着予定までは十五分しかない。
「何か! 何か無いのか!?」
 開けられる場所を全て開け、至る所を拳で叩き、足を踏み鳴らす。しかし、当然ながら何も起こらない。カプセルはその速度を変えないまま、着実に目的地を目指す。
「もし、カプセル内の方がこの放送を見ていたら、良く聞いて下さい」
 自分に投げかけられたその言葉に目を向ける。
 いつの間にか映像が切り替わっている。喧騒を他人事のように見ているとしか思えない、落ち着いた様子のスタジオだ。その様子に彼は苛立ちを覚えたが、文句を言っている場合ではない。今、まさにテレビから、重要な情報が流れようとしているのだ。
「決してパニックにならず、シートに座り、しっかりとシートベルトを締めて下さい。上部の収納部に毛布が入っています。少しでも衝撃を吸収するため、それを体に巻いて、出来るだけ体を小さく丸めて下さい」
 そして。
「では、現場にカメラを戻します」
「はい、こちら現場です! 今、十六台目が激突しました! 危険です! カプセルの破片がこちらまで飛んできました! 私も安全のため、距離を取らせていただきます! テレビをご覧の皆さま、ここ、上海スペースポートでは――」
 呆然とした。全く気休めとしか言いようがない。時速八百キロで激突する金属の塊に乗っているのに、毛布の一枚でどうしろというのか。
 彼の頭の中は、これなら聞かない方がマシだった、という絶望に埋め尽くされていた。
「ふざけるな! くそ! 何か無いのか! 何か!」
 叩き付けた拳から血がにじむ。しかしそんなことを気にしている場合ではない。あと数分もすれば、確実に血がにじむ程度ではすまないのだ。
「止まれ! 止まれ! 壊れろ! 手動ブレーキとか無いのか!」
 時間は十七時四十八分になった。今からブレーキが作動したとして、果たして間に合うのかも分からない。それでも彼は諦めず、ただひたすら無意味にあがき続けた。
 手荷物の中から携帯電話やひげそりなど、少しでも固いものを取り出して色々なところを叩きまくる。緊急連絡用電話など、堅くないものは、既に原形をとどめないまでに砕かれていた。
 と、その時。唐突にカプセル内が暗闇に包まれた。直後、すさまじい金属音が響き、カプセルが揺れた。
 彼は、突然の状況に成すすべなく、慣性によって前のめりに突っ込んだ。
 ぶつけた鼻を押さえながら、彼は自分の行為が無駄じゃ無かったことを実感した。壊せるものを壊し尽くした結果、電気系統がショートしたらしい。それによりシステムが正常な形で再起動したのか、ブレーキが正常に作動したのだ。
 やがて、音が小さくなり、カプセルが完全に止まった。
 ゆっくりと、カプセルの外を覗く。すると、僅か三十メートルか五十メートル程度の先に、テレビで見ていた惨状が存在した。
 全くぎりぎりのタイミングであったことを実感し、彼は安堵のため息を漏らした。
 直後。
 すさまじい衝撃と轟音が彼を襲った。全身を激しく叩きつけられ、意識が一瞬で朦朧とする。
 途切れかけた意識に、雑音混じりのテレビの音声が流れて来た。
「今、運よく停止…たカプセルがあ…ました。…かし、後続…カプセ……衝……新た…悲劇……………………」
 そして何も聞こえなくなった。テレビの音も、ほんの数十メートル先の悲鳴も怒声も何もかも。






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コメント


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……面白い。

syo | URL | 2010-05-06(Thu)11:52 [編集]


>syoさん
コメントありがとうございます。
シンプルな感想は、むしろシンプルに直球で心に響くモノでございますね。
端的な言葉であるからこその喜びが実に感じられました。
今回は、何か所かで晒したのですが、高い評価をいただけており、とても嬉しいまろんどさんでございますよ。

まろんど | URL | 2010-05-08(Sat)03:52 [編集]


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